キミ
と彼
突然だけど、俺には好きな子がいる。
その子は近所に住む、女の子。
小さいころからいつも一緒で、高校生になった今も同じ高校に通う。
そう、いわゆる幼馴染ってやつ。
その子の名前は。
同じ高校に通っているけど、お互い部活だったりで登校時間も下校時間も違くなったから、あまり会えない。
それに、クラスも違うものだからさらに会う機会もないわけで…
そんな今日、たまたま廊下でを見かけて、嬉しくなって話しかけようとしたら…
が栄口と楽しそうに話してんの。
あんな笑顔、俺今まで見た事あったかな…
「…き、文貴!ちょっと文貴!?」
「ふぇっ!?」
「ねぇ、人の話聞いてる!?」
もう、文貴のバカ!と言いながら頬を膨らます。
実は、今の時期テスト期間前ということで部活は全校で休止。
だから、とほんと久しぶりに一緒に帰ってたり・・・
廊下で話しかけられなくて死んだ魚のような目をしてた俺に、阿部が「きもい」と一言放って帰ったことももう気にしない!
それくらい今、嬉しい!
でも…
やっぱり…
「なぁ、栄口と仲いいの?」
ずっと気になってた。
「え?なんで?」
きょとんとした顔して…
「今日、廊下で楽しそうに話してたからさ。」
「別に普通じゃない?栄口君、優しくていい人だよ?たまに顔真っ赤になってて見てると楽しいよね!」
ふふっと言いながらまたあの笑顔。
「栄口のこと……好きなの?」
「……なんでそうなるの?」
隣で、同じ歩幅で歩いていたが立ち止り、そう答えた。
の顔を見ると、なぜか今にも泣きそうで……
「私、好きな人はいるよ。」
胸にチクッと何かが刺さる。
「でも、付き合いたいとか…今は思わない…」
「え、なんで…?」
俺の方に向けていた体を、歩いていた方向へ戻す彼女。
「まだ、1年生だから。私ね……
誰かさんの、甲子園優勝!って夢を見届けるまで、一緒に頑張ろうって決めたの。」
胸に刺さった何かが、ゆっくり溶けていく気がする。
ほのかにピンク色に染まったの頬。
それは夕日のせいなの?
それとも……
「じゃ、じゃぁね!また明日!」
そう言っては走って行ってしまった。
今の言葉って…
好きなやつが野球部にいるってことだよな!?
やっぱり栄口なの?あ、それとも巣山!?
あー!!!と頭を抱える俺。
俺だったらいいな、なんて思ってみるけど…
あ、やっぱり自信ない…
高校最後の夏、甲子園優勝をしたあと、この時の真相が明らかになるのを俺はまだ知らない。
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文貴好きです、ヘタレでいいと思う!
2012.11.17 Maya