あ〜、夏休みっていうのに暇だ…


リナリーは家族でハワイだし、アレンは親族がヨーロッパにいるらしくヨーロッパへ帰省中。
神田は剣道部の合宿だとか言って、引退したのにコーチとして合宿へ行っており不在。



夏休みが始まって半分が過ぎた。


もう夏休みの宿題は終わっている。


今は大学の受験勉強で図書館へ行ったり、生徒会の仕事のため学校へ行くくらい。


4月に日本へ帰ってきて、友達が全くいない。


私って悲しい奴だな…


なんて思いながら、図書館からの帰り道を歩く。

今は14時。まだまだ時間はある。
日本に帰ってきてから、買い物という買い物はまだしていないな…


夏物の洋服とか欲しいな〜なんて……


そういえば、昨年大きなショッピングモールができて可愛い洋服屋さんとかカフェがあるとかリナリーが言ってたなぁ。


数秒後、よし行こう!と思い立ち、いつもとは逆方面の電車に乗った。




最寄駅とショッピングモールは通路でつながっており、雨が降っても濡れない様な作りになっていた。
日本一大きなショッピングモールらしく、入っているお店は300店舗以上、2つの建物に分かれており本当に広い。


いろいろとお店を見て回る。
リナリーの言うとおり、可愛いお店もたくさんあるし、雑貨屋さんなど年齢を問わず楽しめるショッピングモールだ。


何箇所かお店を見て周り、買う洋服を決めた後、某有名なアイス屋で食べようとフードコートへ。
何種類もあるアイスから2つ選び、手ごろなベンチを見つけ座ってアイスを食べる。
夏休みだからか家族連れや友人同士、カップルが多い。

1人で買い物というのはあまりいないようだ。



アイスを食べていると、目の前に黒い影が立ちはだかった。


ん?おかしいな


そう思いアイスを持ったまま顔を上にあげる。
すると見知らぬ2人の男性が立っており、こちらに笑顔を向けていた。
年齢は大学生くらいだろうか?自分よりも少し年上のように見える。


「ねぇねぇ、お姉さん可愛いね。今1人なの?これから暇?俺たちとカラオケでも行かない?」


なんて右側に立つ髪の毛が茶色の男性が言う。


これはナンパ?
いやいや、そんなわけないよね?


「ねぇ、お姉さん聞いてる?」


そう言い、今度は肩に手を置いてきた。


あ、なんだ、やっぱりナンパされてるのか。


そう理解したとたん、私は立ち上がり何事もなかったかのように立ち去ろうとする。


が、腕をぐっと強い力で掴まれ、前に進めなくなった。


「ちょっと無視ですか〜?」


あ〜、なんで私なんだ。


無視してんだから無視だよ、関わりたくないサイン出してるのがわからないのか、この人たちは。
うざい、消えろとでも言ってやろうかとくるっと振り向いた瞬間、誰かが私の肩をたたいた。



、こんな所にいたんさ?」


私の肩をたたいた人、それはオレンジ色の髪の毛の人。
私に向かってニコっと笑いかける。


「な、なんだよ、彼氏持ちかよ。」


男性2人はそう言って私の手を離し、そそくさと行ってしまった。


展開が速すぎて現状を理解できない。


ん?隣にいるのはあれ?


「ラビ……」


ってば簡単にナンパされすぎ。危ないって。」


そう言いながら、今度は私の手を引いて歩きだす。


「え、ちょ、ど、どこ行くの…」


手、握られてる。

あれ、また……

心臓がバクバクしてる…

体温がどんどん上がっていくのがわかる。


やだ、恥ずかしい…

きっと、私だけ……


「ラビ、ラビ!離して!」


ラビはそう言っても手を離そうとはしてくれなかった。
心なしか歩くのも早くて、ついていくのでやっと。


歩くの速いよ〜…


そう思ったとたん、視界がグラッと揺れる。


あ、転ぶ…


そう思い、衝撃に耐えようとしたが、思っていた衝撃は来なかった。
代わりに、あったかいものに包まれる。


「っ…あっぶなかったさ〜」


え?


ふと顔をあげるとラビの顔がすぐ近くに。

倒れそうになった私をラビが抱きとめていた。


?お〜い、どうした? ってなんか冷たいさね……」


ラビの「冷たい」という言葉にハッと我に返る。

片方の手に握っていたアイスが、ラビの洋服についてしまっていた。


「あ!ご、ごめん!!!よ、洋服が!!!」


人様の洋服を汚してしまった!!!


バックからタオルを取り出し拭いていく。
しかし、白をベースとしたポロシャツのためチョコレートのアイスが落ちない。
バニラだったらまだよかったけど…ってそういう問題じゃないか。


「ラビ!ちょっとそこのベンチで待ってて!絶対に動かないでね!」


ぽかんと口をあけて頭にハテナを浮かべるラビにそう言い残し、
私はお店を見ようとズラズラと歩く人ごみの中へ飛び込んで行った。



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2013.5.2
ラビにキュンキュンしてしまえっ!  Maya